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めまいの話

めまいは原因が分かれば治ります


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U 障害がある部位によって、3グループに分けられます

一.耳に原因があって起こるめまい

1.良性発作性頭位(りょうせいほっさせいとうい)めまい(しょう)

@この病気は、めまい患者全体の約50%を占めます。
めまいで困って来院される患者さんの2人に1人は、この「良性発作性頭位めまい症」であります。
したがって、耳が原因で起こるめまいのなかで一番多い病気です。(表1)

A朝起きたとき、寝返りをしたとき、人に呼ばれて急に振り向いたとき、高い所の物を取ろうとして上を向いたときに、激しいグルグルまわる回転性のめまいが起こります。
たとえば、床屋でシャンプーのために仰向きになったとき、歯科で治療のため仰向きになったときや靴ひもを結ぶために下を向いたときに、短時間のめまいが起こることがあります。難聴、耳鳴り、耳閉塞感というような症状は伴いません。   

Bめまいの持続時間は、数秒〜数10秒位で短いです。
その短いめまいが、頭位を変えることで何回も起こります。何回もわざと頭位を変化させてめまいを起こしていくと、だんだんめまいが軽くなり減衰していくのが特徴です。朝起きたときがひどく、夕方には、だいぶ軽くなります。一日でいえば、朝悪く夕方は調子が良いようです。

C内耳の前庭器(ぜんていき)卵形嚢(らんけいのう)という袋があります。
その袋のなかに耳石器(じせきき)がありますが、重力や直線運動のセンサーです。耳石器のなかの神経細胞の上に極小な、炭酸カルシウムで出来ている「耳石」が多数あります。この「耳石」が何かの調子ではがれて、三半規管の中に入り込み、頭を動かすことで、「耳石」がコロコロと動き回り、リンパの流れが起き感覚毛(かんかくもう)を刺激して、短時間のグルグルめまいが起こる病気です。

図3の説明
図3 前・後・外側の三半規管と卵形嚢の位置関係を示します。卵 形嚢に存在している耳石は通常、他の場所に移動しないので すが、何らかの原因で耳石がはがれると、後屈姿勢のときに 総脚まわりで後半規管膨大部へ、臥位寝返り姿勢で外側半規 管膨大部へ迷入することがあります。耳石が半規管内をうろ うろするのが半規管結石で、半規管膨大部のクプラに付着す るのがクプラ結石です。
(参考文献12 より引用)

Dこの病気を診断するためには、目に赤外線CCDカメラをつけて、頭や体の位置を変化させることで、どの頭の位置でめまいが起こるかを検査し、三つあるどの三半規管に「耳石」が入っているのか、それも右か左かを確認していきます(頭位眼振検査・頭位変換眼振検査)。これが確認されなければ、後で説明いたします「耳石置換療法(じせきちかんりょうほう) 」という治療ができません。
もちろん、他の病気からくるめまいがないかも、同時に眼振で調べていきます。

図4
図4の説明
1)正面坐位→懸垂頭位→正面坐位(A)
2)右45度頸部捻転坐位→右45度懸垂頭位→右45度頸部捻転坐位(B)
3)左45度頸部捻転坐位→左45度懸垂頭位→左45度頸部捻転坐位
の順に頭位を急速に変化させた後の眼振を観察する。本図では1)と2)
の頭位変化の実際を示している。
(参考文献14より引用)

E「耳石」がどうして、はずれるのか原因は不明ですが、過去に頭部外傷やむち打ちをした人は、衝撃で「耳石」がはがれ、三半規管の中に入り、この病気を起こしやすいです。
日常、頭の運動の少ない人、たとえば、寝たきりの人や長期入院の人、腎臓透析(じんぞうとうせき)を長い間うけている人に、起こることが多いようです。また閉経による女性ホルモン分泌が少なくなり、カルシウムが低下しておこる、骨粗鬆症の人にも多いようです。

F運動不足の人に多いのはどうしてでしょうか。
運動不足で頭を動かさずにいると、はがれた「耳石」が、卵形嚢の底に沈んでたまりやすくなります。
卵形嚢の底には掃除細胞がありませんので、「耳石」やその残骸を取り除けなくなり、そのまま底に沈殿することになります。たまった「耳石」が三半規管の中に入りやすくなり、「耳石」が三半規管のなかで浮遊して、頭を動かすと「耳石」が動き、三半規管の中のリンパの流れが生じます。
このリンパの流れが膨大部にあるクプラを曲げ、有毛細胞を刺激して、めまいが生じることになります。男性より女性の方が3倍位多いのは、女性の方が運動不足のせいでしょう。若年者より高齢者に多く起こるのも、高齢者の方は運動が、少ないためでしょうか。

G治療は、「耳石置換療法」、すなわち理学療法のエプレイ法・レンパート法などを行います。
医師が眼振を観察しながら、手で頭を動かして、はずれた「耳石」を、元に戻す理学的治療です。5分間位、椅子の上やベッド上で、頭を決められた位置や方向に動かして行います。

図5 図5 の説明
エプレイ法の頭部の動きと、これによる後半規管内の耳石の動きを示 した。
一連の運動により管内の浮遊耳石が卵形嚢内に移動する推定図である。
(参考文献14 より引用)


「耳石」が、後半規管に入り込んでいる場合は、アメリカのEpleyが1992年に、考案したエプレイ法を実施します。「耳石」が、外側半規管に入り込んでいる場合は、ドイツのLem pertが1994年に、開発したレンパート法を行います。 エプレイ法は、エプレイ法とかエプリー法とか呼ばれていますが、Epley医師の周辺では、エプリーと発音されているそうです。

Hこの病気は、自然に治癒する場合が、多いといわれています。
「耳石」が半規管に入り、リンパ液の中を浮遊する「半規管結石症」の場合は、「耳石」が自然に元の場所に戻ることで、また、「耳石」が非常に柔い場合には、溶けて小さくなり、悪影響を起こさなくなるのであろうと考えられています。自然治癒しなくても、良性で比較的治りやすく、1回の「耳石置換療法」で治る幸運な人も多くいます。大部分の人が、数回の「耳石置換療法」で治ります。 人によっては、治るまで時間がかかる場合があります。これは「耳石」が膨大部稜のクプラの粘着な所に付着して、はずれるまで時間がかかるからであります。これを「クプラ結石症」といいます。前半規管は、起きた状態でも寝た状態でも、上の方に位置しますので、耳石が前半規管に入り込むことは少ないといわれています。
「良性発作性頭位めまい症」は、再発は少ないものですが、20人に1人位は、また起こることがあります。再発しても、また「耳石置換療法」により治りやすいようです。

I「良性発作性頭位めまい症」で、めまいの薬をいくら飲んでも、「耳石」は、元のところには戻ってはきませんので、薬では「良性発作性頭位めまい症」は、治らないのです。

J他の内耳性めまい、たとえば、メニエール病やめまいを伴う突発性難聴などの経過中に、この「良性発作性頭位めまい症」が合併して起こることがあります。
 平成29年度1年間に、私のクリニックのめまい外来を受診された、めまい患者さん437名の中で「良性発作性頭位めまい症」と診断された方は、212名(約49%)でしたが、この212名の中の46名(約22%)は,メニエール病と合併しておりました。(表1)このようなメニエール病と合併している患者さんによく尋ねますと、「以前から何回も繰り返し起こっていためまいは、頭の位置を変換して起こるのではなく、めまいの持続時間も長時間のものでありましたが、最近のめまいは、頭の位置の変化で起こり、持続時間は数秒から数10秒と短時間であり、以前からのめまいと違う」といわれます。
これは、メニエール病の長い経過中に、「良性発作性頭位めまい症」がメニエール病に合併して、最近起きたものと思われます。ある学者は「メニエール病の約5%に良性発作性頭位めまい症を伴う」と報告しています。
このような場合は、まず「良性発作性頭位めまい症」を「耳石置換療法」で治療させる一方で、メニエール病の治療にもとりかかります。

K睡眠しているときに枕が低いと、耳石器と三半規管が水平になって、「耳石」が三半規管に入りやすくなりますので、枕はやや高めにします。寝具は、自由に寝返りができるものを選びます。
あまり柔らかいものではなく、適度な硬さのものが、体を自由に動かせて寝返りができて良いようです。

Lところで、「耳石置換療法」のエプレイ法やレンパート法が考案されたのは、今から約25年前です。
それから最近にかけて広がってきたわけです。ですから、めまい診療を専門にしている医師だけしか、この病気を診断し、この治療を実施していないのではないかと推測されます。しかも、この「良性発作性頭位めまい症」が、めまい患者のなかで、一番多く約50〜60%を占めます。そして、治りやすい病気です。この点を強調して「めまいは原因が分かれば治ります」と申し上げている訳です。

2.メニエール病

@ メニエール(1799〜1862)は、フランスの内科医です。
めまいのなかには、脳の病気によるものではなく、内耳の異常によるものがあることを発見しました。これから「メニエール病」という病名が起こりました。

図6

A 三大症状のめまい、難聴、耳鳴りがあります。めまいを起こす病気の20%位です(表1)。

B 原因は、耳の三半規管のリンパ水腫(むくみ)が原因で起こります(図1)。内耳全体のリンパ液が、何らかの原因で過剰にできてパンパンにふくらみます。  このむくみがひどくなると、そのむくみの圧迫で、内耳に障害が起こり。めまい、難聴、耳鳴り、耳閉塞感が起きてまいります。

C どうしてリンパ液が多くなって、むくんでしまうのでしょうか。 内リンパ液が、過剰に作られるのは、 ストレスが原因であろうといわれています。ストレスによって、ホルモンを分泌するシステムに変調が起こり、抗利尿ホルモンに影響を与えて、水分をため込むのではないかと考えられています。

D 何度もめまい発作を繰り返します。良かったり、悪かったりいます。1回のめまい発作は、数10分から半日ほど続きます。「良性発作性頭位めまい症」より、めまい発作時間が長いです。このようなめまい発作が、月に数回、年に数回繰り返します。

E メニエール病患者の男女比と年齢別の頻度は、女性に多く、男性の3倍位に起きてきます。年齢別で見ますと、30〜50歳の年齢層でかかることが多く、仕事が多く、多忙な青壮年期に多いようです。

表4  メニエール病の男女比と年齢比
(富田耳鼻咽喉科医院めまい外来2017年1月1日〜12月31日の1年間)

年齢
(歳台)
10
20
30
40
50
60
70
80
90
小計
合計
男性
(名)
0
1
2
5
2
8
7
3
0
28
107
女性
(名)
0
3
15
11
14
17
13
6
0
79

F 自律神経症状を伴うことが多いです。吐き気(はきけ)(むかむかして吐きたくなる気分) 嘔吐(おうと)(食べ物を吐くこと)、頭痛、肩こり、不眠などです。

G 誘因として、ストレス、過労、睡眠不足などがあります。 問診で時間をかけて、患者さんの家庭環境や仕事環境を詳しくお尋ねいたします。家族の内容、病気、育児、子どもの教育、親の介護、家庭や親族の不和、隣人関係、子どもの不登校、成績不振、いじめ、離婚、別居、同居人、さまざまな団体の世話ごと、職場での仕事の内容、仕事量、転勤、仕事の失敗、対人関係の悩み、帰宅時間、睡眠時間、その他ストレスになること、心配なことなどの誘因になることを、詳しく尋ねることから始めます。
このような誘因を見つけて、それらに対処することが大事です。仕事などでストレスをためやすい人、神経質な人、まじめで几帳面な人、責任感が強く完璧主義の人などに多く見られます。

H 治療:この病気はストレス、過労、睡眠不足などの生活習慣が悪影響し、三半規管の「内リンパ水腫」、すなわち「むくみ」をきたすことで起こります。生活面で、ストレス、過労、睡眠不足などを軽減するように気をつけることが、一番大事です、すなわち「生活改善」が必要です。 めまいのお薬では、なかなか効果はありません。めまいの原因を根本的に治してくれないからです。私は、お薬は普通処方いたしません。  治療で大切なのは、この「くたびれ」を解消することが一番です。ストレス、過労、睡眠不足からくる精神的「くたびれ」と肉体的「くたびれ」を解消するためには、次の三つが大切です。

  1. 「気晴らし」・・・趣味、楽しみを探す、歌を歌う、 カラオケ、コーラス、おしゃべり、詩吟、散歩、釣り、旅行、温泉、ドライブ、ウインドウショッピング、寄席で笑うなど。

  2. 「仕事量を減らす」・・・仕事量を減らし、残業を減らして帰宅する。
    何事もあまり、我慢をしない。

  3. 「睡眠を改善する」・・・遅い夕食を減らす、 日中に適度な運動して疲労する。

改善されなければ入眠剤の使用も考えます。 以上の「生活改善」が、まず大事です。
次に、「有酸素運動(ゆうさんそうんどう)」が良い効果があるといわれていますので、ぜひ実践して下さい。体操、ウォーキング、ランニング、サイクリング、水泳、水中歩行、卓球、エアロビクスダンス、ストレッチなどです。1回1時間位、週3回、1分間の心拍数100〜120位の「有酸素運動」がよいといわれています。    このような「有酸素運動」を行うことで、全身の血液循環が 良くなり、内耳に血流が増加し代謝が活発になり、内リンパ水腫(内耳のむくみ)が軽くなってきます。

I 一度起きてしまうと、すぐに完治は難しい病気です。根気よくこれらの「生活改善」や「有酸素運動」を、続けて治療しなければなりません。  根気よく治療をしているうちに、3ヶ月に1回起きていためまい発作も、年に1回、2年に1回と回数が減っていきます。


3. 慢性中耳炎由来(まんせいちゅうじえんゆらい)内耳障害(ないじしょうがい)

慢性中耳炎、とくに真珠腫性中耳炎に多いです。 中耳炎の炎症が内耳に波及し、また中耳にできた真珠腫が、内耳を圧してめまいを起こします。


4. 前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)

感冒などによるウイルス感染で、前庭神経が炎症を起こし、強いぐるぐるめまいが断続的に数日間起こります。しかし難聴や耳鳴りはありません。大きなめまいの後数ヶ月は、最初のような激しいめまいはなく、体動時あるいは歩行時にふらつき感がありません。


5.めまいを伴う突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)

感冒などによる内耳のウイルス感染や血管循環不全が原因で、聴神経に障害が起こると、急に難聴がきます。この時に聴神経のとなりにある前庭神経の障害も起こり、めまいを伴う場合があります。突発性難聴の約40%に、めまいを伴うといわれています。メニエール病と異なるのは、めまいは最初の1回だけ起こり、これを繰り返すことはありません。難聴や耳鳴りは、めまい感が消失しても持続します。


6.外リンパ(ろう)

鼻のかみすぎやダイビング、飛行機への搭乗などで、中耳圧の高まりで内耳窓が破れて起ります。水の流れる音がすることがあります。瘻孔は、通常自然に閉鎖することが多いので、保存的治療が勧められています。


7.遅発性内(ちはつせいない)リンパ水腫(すいしゅ)

長く続く高度な一側の内耳性難聴に続発して、進行性の内リンパ水腫が生じ、その結果メニエール病様の前庭症状、すなわちめまいが起こる病気です。


8.聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)

内耳道に腫瘍ができ、長期間の経過で増悪する難聴があり、約20%の症例で、めまいを起こしてくることがあります。


9.その他の内耳性めまい

@ハント症候群
耳介、外耳道やその周辺、または、軟口蓋に帯状疱疹(たいじょうほうしん)ができて、難聴、耳鳴り、めまいが生じ、顔面神経麻痺を起こします。

A内耳梅毒(ないじばいどく)
梅毒が原因で、血行性内耳炎あるいは内耳神経炎を起こし、蝸牛症状と前庭症状が組み合わされて発病します。両側性難聴、両耳鳴があります。血清梅毒反応が陽性に出ます。

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