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其之四−「梅野信吉」
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はじめに > 略歴と業績

2.略歴と業績

 梅野信吉は、文久2年11月13日、福岡県朝倉郡甘木町大字甘木字川原町藤田源吾の次男として出生。藤田源吾は粕屋郡から養子に来た人で、当時は戸長で獣医をしていた。長男の藤田進は医師で川原町(元篠崎歯科医院跡)で医院を開業、当時郡医師会代表をされており、後に北里研究所で研究中に東京で死亡した。次男が信吉で、甘木小学校、福岡師範学校卒業後、約2ケ年半小学校教員を勤め、20才の時上京して、明治11年11月福岡県公費獣医生として東京私立獣医学校に入学し、同17年同校を卒業、その後帰郷し、明治18年11月26日甘木町1553番地梅野市右ヱ門と養子縁組、家督相続戸主となる。当時は、改姓し戸主、長男となると徴兵がのがれることが出来たためとされている。

 同19年7月1日農商務大臣より獣医開業免状を受け、福岡県獣医巡回教師に任命され、記念碑の写真(森林組合門前)甘木獣医学校(明治19年開校)設立に参画し教鞭をとる。教師3名、生徒29名で、教科は家畜生理、解剖、内外科とあり、学校の所在地は、甘木市泉町の元朝倉保健所のあった元県有地で、現在は甘木森林組合および甘木警察署職員住宅があるあたりで、森林組合門前に『甘木獣医学校屋敷跡』の記念碑がある。この獣医学校は3年位で廃校になったようである。廃校になったのかまたは他に合併されたのか不明であるが「明治21年10月31日甘木獣医学校名称変更」という記録が残されている。その後、後町(現在の恵比須町)で牛乳製造業を始められたそうである。当時では牛乳を買う人も余りなくこれも止め、上京し、三菱の牧場に勤められたとのことである。間もなく北里柴三郎博士がドイツから帰国され、細菌学研究のため獣医を必要とされ梅野信吉に口をかけられたとのことである。明治25年(1892)2月、大日本私立衛生会の牛痘種継所技師員に嘱託され、動物主任兼製苗主任となり、その後間もなく、伝染病研究所に入り、北里博士の下に細菌学の研究と血清製造に従事することになった。

 明治29年(1896)6月内務省所管血清薬院の創設と同時に同院技手に任ぜられ、ついで同32年官立伝染病研究所助手となり、同年8月痘苗製造所技手を兼任した。同34年(1901)5月痘苗製造所技師、同38年4月伝染病研究所技師を歴任した。同34年4月麻布獣医学校長となり、大正3年11月伝染病研究所が内務省から文部省への移管に際して、これに反対した北里柴三郎らとともに官職を辞して、北里研究所創設に参加し、直ちに同所部長となった。大正7年(1918)10月北里研究所が社団法人組織となると同時に社員に選出され、ついで同13年9月監事に選ばれた。この間、研究と研究所の事業の両面にわたってその生涯を捧げられたのであった。大正8年より同15年まで日本獣医学校長となる。

 梅野信吉の業績は、純牛痘苗の創製に成功して、学術上および公衆衛生上に大きな貢献をされ、また犬体用狂犬病予防液を創製し、畜犬に応用して同病の根絶をはかったことである。前者の発明の功績によって、明39(1906)年2月に勲6等単光旭日章が授与されたのである。博士は北里柴三郎を助けて、わが国における血清製造に寄与するところが多く、牛痘苗および狂犬病予防液の創製については、国内だけではなく、広く欧米にも伝えられ、応用され、博士の名声を内外に重からしめた。

 前述の2大発明の他に、馬の腺疫病原についても研究を重ね、ついに腺疫予防液を創製し、腺疫の予防上に絶大なる貢献をなしたのである。そして博士の生涯を通して20数篇の業績が公にされているが、何れも精緻をきわめ学界に永く伝えられている。博士は、還暦を迎えられてもなお研究を進められ、ただ学問一筋に生きられた点は、学者の鑑として同僚および門下生の敬慕してやまないところであった。

 梅野信吉博士は、明治41年(1908)10月獣医学博士の学位を授けられ、また内外の博覧会や畜産会などから金牌および功労章を授与された。明治34年9月正7位に叙せられ、その後、大正3年11月には正5位に叙せられた。また、明治39年に勲5等瑞宝章、同45年には勲4等を賜った。昭和5年(1930)3月には、勲3等瑞宝章が授与された。博士は昭和5年3月12日、港区白金の自宅にて脳溢血のため逝去さる。享年67才。文京区白山にある心光寺に葬られている。

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