1.はじめに
緒方春朔の『種痘必順辨』は、日本人によるわが国最初の種痘書であり、日本医学史上貴重なものとされている。医学史の大家富士川游博士は著書『日本医学史』の中で、「本邦第一ノ種痘書ナリ」と述べているように、これより先に日本人の手になる種痘書は見当たらない。これほど貴重な種痘書の題名が医学書や医史学書の中で「順」とあるもの「須」とあるもの、ばらばらでどちらが正しいか不明とされている。しかし、今回の200年記念事業で調査を進めていく中で、「順」が正しいのではないかと私自身確信を得たし、記念事業のシンポジウムの中でも「順」が正しいのではないかとされた。そこで郷土の先賢の名誉のためにも、この「順」か「須」かの問題をはっきりさせ、一度、医史学会で発表し「順」説を主張しこの問題に決着をつけたいと思っている。その下調べの意味もあって、ここにその混乱の状況を調べ、日本に現存せる『種痘必順辨』を調査のうえ、この問題に考察を加えてみたいと思う。